「広告費は毎月出している。でも、今月の新患さんがどの広告から来たのか説明できない」
整骨院・接骨院の集客支援をしていると、この状態のご相談を本当によくいただきます。そして原因は、院長先生の努力不足でも、広告代理店の怠慢でもありません。整骨院の予約は「電話」と「LINE」に集中していて、この2つは通常のアクセス解析でもっとも測りにくいという、構造的な理由があります。
厄介なのは、この状態でも広告管理画面の数字は「良く」見えていることです。コンバージョン数は毎月きちんと計上され、CPAも悪くない。それなのに、実際の新患数は横ばい。この食い違いが続くと、広告を止めるべきか続けるべきかの判断そのものができなくなります。
この記事では、なぜ整骨院の広告効果が見えなくなるのか、その正体を分解したうえで、経路別に成果を切り分けるための考え方と手順を整理します。専門的なツールの導入を前提とせず、今日から確認できることから順に並べていきます。
整骨院の問い合わせは、フォームではなく電話とLINEに集中する
まず前提として、整骨院に来院される方の多くは「痛み」を抱えています。腰が痛い、寝違えた、交通事故に遭った。こうした状態の方は、じっくり比較検討してからフォームを送信するのではなく、その場で電話をかけるか、LINEで聞くという行動を取ります。
ところが、WEBのアクセス解析は「フォーム送信 → サンクスページ表示」という流れを前提に設計されています。サンクスページが表示された回数を数えることで、成果を計測する仕組みです。
電話とLINEには、このサンクスページが存在しません。電話をかけた人はブラウザを離れますし、LINEの友だち追加はLINEアプリの中で完結します。成果が発生する場所が、計測できる範囲の外側にある。これが、整骨院の広告効果が見えない一番の理由です。
盲点①:「タップ数」は「成果」ではない
この問題への対処として、多くの現場では「電話ボタンのタップ」をコンバージョンとして設定しています。GTMで電話リンクのクリックを拾い、GA4や広告管理画面に成果として送る。よくある構成です。
ただ、ここで数えられているのは「電話番号のリンクが押された回数」であって、「電話がつながった回数」ではありません。この2つの間には、次のような差が生まれます。
- スマホをスクロール中に誤ってタップした
- 発信画面まで行ったが、思い直してキャンセルした
- 営業時間外で、呼び出し音だけ鳴って切れた
- 施術中で電話に出られず、そのまま切られた
LINEの友だち追加も同じ構造です。ボタンは押されたけれど追加画面で離脱した、そもそも既に友だちだった、というケースが一定数含まれます。
当社が計測している店舗ビジネス60店舗のデータでは、ある1か月間でLINE・電話のタップが976件、実際に成立したのが514件でした。押されたのにつながらなかった件数は462件。タップを成果として数えると、実態の約1.9倍に膨らむ計算になります。
これがなぜ問題かというと、広告の評価が丸ごと狂うからです。10万円の広告費でタップが40件なら、CPAは2,500円。悪くない数字に見えます。しかし実際につながったのが20件なら、本当のCPAは5,000円です。数字上は成功している広告が、実は赤字だったという判断ミスが起きます。
コンバージョン計測の考え方そのものについては、コンバージョン計測とは?”クリック数”ではなく”完了数”を見るべき理由で詳しく整理しています。
盲点②:Googleマップからの流入が「直接」に化ける
整骨院の集客において、Googleビジネスプロフィール(MEO)は広告と並ぶ主要な流入源です。「新中野 整骨院」「◯◯駅 接骨院」で検索した人が、マップの一覧から電話をかけてくる。地域密着型の業態ほど、この経路の比重は大きくなります。
ところが解析ツール上では、この流入が「直接(direct)」や「参照(referral)」に分類されてしまうことが頻繁に起こります。設定ミスではなく、リファラー(流入元の情報)が途中で失われる仕組み上、ほぼ必然的に発生する現象です。
結果として何が起きるか。MEOの成果が過小評価され、相対的に広告の成果が過大評価されます。「MEOは効いていないから広告に寄せよう」という、実態と逆の判断につながりかねません。
この現象の詳しい仕組みと対処法は、MEO経由のCVが「直接」や「参照」に化ける理由と対処法にまとめています。
経路別に分けると、判断はこう変わる
では、タップではなく「完了数」を、しかも経路別に見られるようになると何が変わるのか。実際の集計例で見てみます。
| 流入経路 | タップ数 | 完了数 | 成立率 |
|---|---|---|---|
| Google広告 | 64 | 29 | 45.3% |
| LINE広告 | 48 | 21 | 43.8% |
| 66 | 33 | 50.0% |
タップ数だけを見ると、InstagramとGoogle広告はほぼ横並び(66件と64件)です。ところが完了数で見るとInstagramが33件、Google広告が29件。成立率にすると50.0%と45.3%で、同じ予算をかけたときに実際に来院につながる数が変わってくることが分かります。
この差は、タップだけを追っていると絶対に見えません。そして整骨院の広告予算は、月10万円〜30万円という規模であることが多い。限られた予算だからこそ、どちらに寄せるかの判断が院の収益に直結します。
「押されているのに、つながっていない時間帯」も見えてくる
もうひとつ、経路別・時間帯別に見ると浮かび上がるのが「取りこぼしの時間帯」です。
電話は、押された瞬間に受け手がいなければ成立しません。施術中で出られない時間帯、受付が手薄になる夕方、そもそも営業していない時間。広告は24時間配信されているのに、電話を受けられる時間は限られているという不一致が、そのまま取りこぼしになります。
ここが数字で見えるようになると、打てる手は具体的になります。反応が多いのに成立していない時間帯だけ広告配信を止める、その時間はLINEへの導線を前面に出す、あるいは受電体制を見直す。広告の中身を変えなくても、受け皿の調整だけで成果が変わるケースは珍しくありません。
整骨院ならではの注意点:問い合わせの「中身」が混ざっている
もうひとつ、整骨院の効果測定で見落とされやすいのが、1件の問い合わせの価値が均一ではないという点です。
整骨院に寄せられる相談は、大きく次のように分かれます。
- 交通事故によるむち打ちなどの相談
- 肩こり・腰痛といった慢性症状の相談
- 寝違え・ぎっくり腰などの急性症状の相談
- 料金や営業時間の確認だけの問い合わせ
通院期間も、1件あたりの売上も、これらはまったく異なります。ところが「今月のCV20件」という数字は、この4つを同じ1件として合算してしまいます。
ここで起きるのが、CV数は多いのに、売上が伸びていないという状態です。営業時間の確認電話ばかりが増える広告と、継続通院につながる相談が来る広告。数字の上ではどちらも同じ「CV」ですが、院の経営に与える影響は正反対です。
だからこそ、CV数だけを追うのではなく「どの経路から、どの時間帯に、どんな問い合わせが来ているか」まで分解する必要があります。1件ごとの記録が経路とひもづいて残っていれば、月末に予約台帳と突き合わせることで、「この広告からの問い合わせは実際に来院につながっている」という判断ができるようになります。
電話とLINEでは、来る相談の質も違う
もうひとつ現場でよく見られるのが、電話とLINEで問い合わせの傾向が分かれるという傾向です。今すぐ診てほしい急性の相談は電話に寄りやすく、価格や施術内容を確認してから決めたい層はLINEを選びやすい。年齢層によっても偏りが出ます。
この2つを合算して「今月の問い合わせ件数」として見てしまうと、どちらの導線を強化すべきかの判断ができません。電話とLINEを別々に、かつ同じ画面で比較できる状態にしておくことが、整骨院の効果測定では特に重要になります。
整骨院で今日から着手できる3つのステップ
ステップ1|「成果」の定義を見直す
まず、現在コンバージョンとして設定しているものが「タップ」なのか「完了」なのかを確認してください。広告管理画面のCV数と、実際の予約台帳の新患数を並べてみるのが一番早い方法です。ここに大きな乖離があるなら、タップを数えている可能性が高いです。
乖離が生まれる原因のパターンは、広告のコンバージョン数が実感と合わない5つの原因で整理しています。
ステップ2|Googleビジネスプロフィールに目印をつける
ビジネスプロフィールに登録しているウェブサイトのURLに、パラメータ(UTM)を付けておきます。これだけで、マップ経由の流入を「直接」から切り離して認識できるようになります。無料で、今日中にできる作業です。
ステップ3|完了まで測れる仕組みを用意する
そのうえで、電話とLINEの「完了」を計測できる仕組みを入れます。方法は大きく分けて、GTMで自前で組む、GA4の設定を作り込む、専用ツールを使う、の3つです。それぞれ測れる範囲とコストが違うので、電話・LINEのトラッキングツールの選び方を参考に、自院の規模に合うものを選んでください。
特に整骨院で注意したいのが電話番号の扱いです。コールトラッキングの多くは専用の転送番号を発行する方式ですが、整骨院の場合、看板・チラシ・保険会社への提出書類・Googleビジネスプロフィールなど、あちこちに電話番号が記載されています。番号が変わると、これらすべての修正が必要になり、NAP情報(名称・住所・電話番号)の不一致はMEO評価にも影響します。今の番号のまま計測できる方式かどうかは、必ず確認してください。
よくある質問
Q. 1院だけの小規模でも、効果測定をやる意味はありますか?
あります。むしろ予算が限られている院ほど意味があります。月10万円の広告費で、そのうち半分が成果につながっていない経路に使われているとすれば、年間で60万円の差になります。多店舗展開している法人よりも、1院で判断を間違えたときの影響のほうが大きいとも言えます。
Q. GA4の設定だけでは足りませんか?
電話タップやLINEボタンのクリックを計測するところまでは、GA4とGTMで可能です。足りなくなるのは「タップの先」を見たいときです。実際に通話が成立したか、友だち追加が完了したかという判定は、ブラウザの外側で起きるためGA4だけでは追えません。
Q. 電話番号を変えずに計測する方法はありますか?
あります。転送番号を発行する方式のほかに、既存の番号のまま計測する方式のツールもあります。整骨院のように番号があちこちに掲載されている業態では、後者を選んだほうが運用上の負担は小さくなります。
まとめ
整骨院の広告効果が見えなくなる原因は、次の2つに集約されます。
- タップを成果として数えている——実態の約1.9倍に膨らみ、CPAが良く見える
- Googleマップ経由が「直接」に化ける——MEOの成果が過小評価される
逆に言えば、この2つを解消するだけで、広告の判断材料は大きく変わります。新しい広告を試す前に、まずいま出している広告の本当の成果を把握する。順番としては、こちらが先です。
LC-COUNT-LINKは、LINE友だち追加と電話問い合わせの「完了」までを経路別に計測するツールです。電話の転送番号は不要で、今お使いの番号のまま計測できます。整骨院・接骨院での導入実績をもとに開発しているため、業態特有の事情にも対応しています。
